一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
ユリウスがしっかりと頭を下げて見せると、皇帝はまたモデストを見据えた。
「お前の悪夢は終わらないか。若く未熟な余の力が及ばず、滅んだボワの復讐は、お前の恨みは潰えぬか」
「知って、いたのですか」
「余の元で働くのだ。調べぬわけがない」
淡々と述べた皇帝に、最初は信じられない顔をしていたモデストだったが、徐々に小さく体を揺らして笑い始める。
「終わりなどありませんよ。陛下が最期を迎える時、苦しむ姿を見ても終わりはしない。墓石にあなたの名前が刻まれるのを見ても」
あの日の喪失感、絶望感はモデストの心に一生残り続ける。
寝ても覚めても紅い旗と揺らめく炎は瞼の裏にあり、消えることはないのだ。
モデストの笑い声が響く。
それは、助けてくれと泣いているようにも見えて、メアリは口を開いた。
「私も同じです。父を死の国に追いやったあなたを死んでも許せはしない。でも、私は復讐はしません。誰かを傷つければ、その誰かの為に泣く人がいるのを知っているから。復讐の心を生むかもしれないのと、知っているから」
メイナードを喪っても、オースティンにイアン、ジョシュアは報復を考えたりはしなかった。
やり場のない感情に奥歯を噛み締め、アクアルーナをしっかりと守るべき道を選んだのだ。