一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「復讐はしない。でも、許せるほど寛大にはなれない。けれど、僅かでも理解したいと思います。あなたの絶望や痛みを。何より、あなたが大切にしていた人たちのことを。心穏やかに過ごした優しい村の景色を。それであなたの悪夢が温かなものに変わることがないとしても、聞かせてほしい。いつか、後悔しない為に」
打ち明ければ良かった。
耳を傾ければ良かった。
手を取っていれば、声を張り上げ止めていれば、嘘で隠せば、背中を押してあげれば。
人は後悔なしでは生きていけないし、後悔するからこそ成長もできる。
メアリは父の死を糧に成長をした。
痛みを知るからこそ、モデストを理解したいと願うのだ。
モデストはメアリを見つめて、力なく笑う。
「母親譲りの愚かなメアリ王女よ。あなたはそうやって誰にでも心をくだいてゆくつもりか。悲惨なものを見て傷ついた者に触れるたび、耳を傾け、共に泪でも流すのか。私のような悪人にも」
「ええ、きっと。それに、あなたを止めるのはあなたを救った母の願いでもあるから」
「本当に……似てますな……」
モデストが眩しそうに目を細めてメアリを見つめると、ルシアンが前進み出た。
「モデスト、ここにお前が犯した罪の数々を記したものがある。全て僕が長い時をかけて集めたものだよ」