一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


過去、皇帝を陥れる為に犯したモデストの悪業。

それらの証拠を綴った書簡を手にしたルシアンは、まるで今までの行いを許さないと言わんばかりの敵意に満ちた冷たい声で言う。


「モデスト、お前を拘束する」


普段の穏やかさからは想像もつかない声色だが、ヴラフォスの次期皇帝としては申し分ない姿で、メアリはいつかユリウスが言っていた言葉を思い出した。

皇帝になることに興味はないのかと聞いた時、『その器は兄にこそある』と答えていたのを。

本当にその通りだなと思いながら兵士たちに囚われたモデストを見送るメアリ。

モデストは今からあの寒い牢に投獄されるのだろう。

モデストがメアリに支えられるユリウスを振り返る。


「あなたをアクアルーナに潜入させたことは失敗でしたな」

「いいや、それだけはお前に感謝しているよ、モデスト。俺は、アクアルーナで良き仲間や友人、大切に想う人を見つけることができた」

「それは重畳」


大してめでたそうな口振りでもないのをユリウスは息を吐いて笑う。

すると、警戒しながら成り行きを見守っていたルーカスがユリウスの肩に腕を回した。


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