一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


イアンからメアリが攫われたという連絡を受けたジョシュアは、仕事を他の医師に押し付けてアクアルーナを飛び出し、フォンタナにて近衛騎士たちと合流。

オースティンに必ず連れて戻るからここで待っていろと言われても頑として譲らず、無理矢理イスベルまでついてきたのだ。

さすがに戦闘に参加はできなかったが、決着が着いた報告をヨハンから受けると、髪を振り乱して宮殿へやってきた。

腕に傷を負ったメアリを見た時のジョシュアは般若と見紛う顔で犯人探しを始め、オースティンに羽交い締めされてどうにかその場をおさめたのはメアリの記憶に新しい。

そして、メアリを攫ったユリウスの手当てをするジョシュアの辛辣な言葉の数々も忘れられない。


「さあ、傷を診よう。薬も持ってきたから」

「ありがとう、先生」


メアリのナイトドレスの袖をまくったジョシュアは、痛みが出ないようにと優しく包帯を解いていく。

そんな中、メアリが「心配かけてごめんなさい」と謝ると、一瞬動きを止めたジョシュアが唇を震わせすぐに引き結んだ。

そして、包帯を全て取り去ると同時。


「僕の可愛いメアリ。君が無事なら、それでいい」


静かな、けれど僅かに涙の滲んだ声で言って、眉を下げて微笑んだ。



< 317 / 330 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop