一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
手当てを終え、ジョシュアが退室すると、着替えと朝食を済ませたメアリは、イアンやオースティンをはじめとした近衛騎士たちを滞在させてもらっている別棟へと向かっていた。
もちろんロッテの案内付きで。
別棟へは庭の景色が眺められる柱廊を渡っていくのだが、そこでルシアンと遭遇した。
ガゼボの椅子に腰掛け、メアリが助けたいつぞやの子猫を膝に乗っけている。
ルシアンはメアリに気付くと唇に美しい弧を描いてひらひらと手を振った。
メアリは挨拶をと、ロッテに断りを入れてからガゼボに歩み寄る。
空には雲ひとつない青空が広がっていて、気温は高くはないが風も穏やかで太陽の陽が心地いい。
「やあ、おはよう、メアリ王女。傷の具合はどうかな?」
「おはようございます、ルシアン皇子。さっきジョシュア先生に診てもらいましたけど、特に悪化もしてないようです。お気遣いありがとうございます」
メアリが微笑むと、ルシアンは子猫の背を優しくひと撫でし、抱き上げて立ち上がる。
「君には迷惑だったかもしれないけど、ユリウスが君を攫って帰ってきてくれたおかげでヴラフォスはいい方向に進めた。心からの礼を」
頭を下げたルシアンに、メアリは慌てて「頭を上げてください」と頼んだ。