一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「お礼を言うのはこちらです。アクアルーナもユリウスやあなたのおかげでヴラフォスの脅威から救われました。ありがとうございます」
「僕はたいしたことはしてないよ。頑張ったのはユリウスだ。ユリウスには本当に苦労をかけてしまった」
そうして、続けて零したのはユリウスがヴラフォスを出た頃のこと。
「ユリウスがアクアルーナに潜入することを反対もせず行かせた父上を憎んだし、止めることもできない自分の不甲斐なさをなげいた。でも、そんな思いを抱えて過ごしても何も得るものはないと悟って、とにかく情報を集め、動くべき時が来たらこの状況をひっくり返してやると決めていたんだ。それが弟の為になるなら躊躇う必要もなかった」
そして今、望んだ未来が現実となっている。
暫く感慨にふけるように池の水面を見つめていると、子猫があくびをしてルシアンの腕から飛び降りた。
子猫がメアリの足元にすり寄って甘えると、ルシアンは「この子は男の子かな?」と笑う。