一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
寝台に腰掛けたユリウスに合わせ、メアリも肌触りの良いシーツの上に座ると、背中から硬い胸板に手を回しつつ白い包帯を解いていく。
胸の内で暴れる鼓動を落ち着けようと、メアリがゆっくり息を吸ったところで、ユリウスが口を開いた。
「さっき、セオに悔しくないのかって聞かれたんだ」
「何かあったの?」
「モデストに一太刀も浴びせられなかったことだよ」
それは昨夜、モデストに突撃した時のことだ。
モデストまであと一歩のところで、潜んでいた弓兵からメアリの命を護った際の話。
「斬るつもりでいたんだ。でも、あいつの命を奪うより、君の命を護りたかった」
あの時、何よりも優先すべきはメアリだったと告げたユリウスは「でも、斬らないで正解だった」と続けた。
メアリは護ってくれたことを嬉しく思いながら「どうして?」と訊ね、貼り付けられているガーゼをそっと剥がす。
「詳しい事情はわからないけど、マリア王妃が救った命なんだろう?」
「ええ、モデストがまだ少年だった頃に」
答えながら、メアリは塗り薬を指にのせて優しく背中の傷に滑らせた。
一瞬、痛みにユリウスの肩が僅かに揺れる。