一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
たじろぐメアリに、ウィルは「乗りながら教える。時間がないから早く乗れ」と急かした。
(そうだ。患者さんが待ってる)
「わかった」
苦手だの怖いだの言ってはいられないのだと自分に喝を入れ、頷いたメアリは鐙に足をかけて馬に跨ると、続けてウィルもメアリの後ろに乗る。
「ウィル、いつ戻ったの?」
「今さっきだ」
「王様は? 騎士団のみんなは?」
気になって矢継ぎ早に問いかけるメアリ。
だが、余程重症な患者なのか「説明は後だ。しっかり掴まっておけ」と答えたのみで、馬の腹を強めに蹴って走らせた。
蹄が力強く地面を蹴り、水を跳ねさせながら城下町を駆け抜ける。
雨粒が顔に当たるのを感じながらも、メアリは必死に馬の動きに合わせてバランスをとった。
それから間もなくして馬が走る速度を少し落としたかと思うと、目の前にはよく知った景色が現れる。
(……お城?)
ウィルはそのまま橋を渡ると、城門をくぐって城に続く曲がりくねった坂道を上がり、王の門と呼ばれる城の正面に位置する二つ目の門の前で止まった。
王の門より先は階段があり、馬は入ってはいけない。