一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


掠れた声で紡がれた言葉に、メアリは出立の時に交わした約束を思い出す。

弱々しい王の姿に喉の奥が潰れたように苦しい。

それでもメアリは唇を開き、涙をこらえて微笑んだ。


「おかえりなさい、王様」


少し震えていたメアリの声。

王は優しい目はそのままに小さく頷くと、後ろに控えているイアンに視線をやる。


「イアン、あれを……頼む」

「ああ」


イアンは答えると、重厚感と風格のあるチェストの上から花束をひとつ手に取り、それを王に持たせた。


「遅くなって、すまない」


そう言って王から花束を差し出されたメアリは目を見張る。


「これ……」


メアリはそれを受け取ると、どういうことなのかと必死に思考を巡らせた。

渡された花の名は、ルクリア。

この花を贈り「遅くなってすまない」と告げるべきは、王ではなく自分の父であるはずだ。
けれど、王は語る。


「今年は、少し寒いから、ルクリアがなかなか手に入らなくて、な」


だが、ここに戻る途中で運良く見つけられて良かったと、力のない声で言うのだ。


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