一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
戸惑うメアリの頬を、大きく温かい王の手が触れる。
「メアリ……私とマリアが望むのは、お前が幸せであることだ。だから、使命や役割に囚われず、お前が望む未来を、進みなさい」
苦しそうにしながら亡き王妃の名を声にし、メアリに願いを伝えた王はメアリの頬を愛しそうに撫でながら「ジョシュア」と涙ぐむ王宮医師に声をかけた。
「なんだい、メイナード」
メアリの前では必ず王という肩書きで呼んでいたジョシュア。
けれど今、親し気に王の名を呼ぶジョシュアの声に、メアリの中で”もしかして”という予想が真実を帯びていく。
もしかして。
王の娘は誘拐されたのではなく、持って生まれた力が原因で友人であるジョシュアに預けたのでは。
手元では自らの娘として育てることはできないが、友人の娘として愛情をかけることを選んだのでは、と。
そして、その答え合わせはすぐに行われる。
「メアリを、こんなにもいい子に育ててくれて、ありがとう」
「それは君とマリア王妃の遺伝だよ」
王と王妃の遺伝。
ジョシュアの返答に、メアリは熱い息を吐いた。
同時に、堪えきれなくなった涙が頬を伝い落ちていく。