一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


城下町の視察として、度々城を抜け出していた王子メイナードは、ある日花売りをしていた娘に一目惚れをした。


『なぁ、イアン』

『なんだ?』

『あの娘はお前の知り合いか?』

『いいや。オースティン、知っているか?』

『ああ、知ってるぜ。騎士団の中じゃ人気もある娘だ』


オースティンによると、その娘の名はマリアといい、城下町でも評判のいい娘だった。

メイナードはことあるごとに花を買い、少しずつ距離を縮め誠実にマリアに好意を伝え続けたが、マリアは頑として首を縦には振らなかった。

その理由は、彼女の生い立ちと言い伝えられているある力が原因であることを、メイナードの想いに根負けしたマリアから聞くことになる。

マリアはティオ族と呼ばれる一族の者で、その中でも未来を視るという特殊な力を持つ巫女の血筋なのだと語った。

だが、他族との婚姻により血が薄まっていてマリアは強い力を受け継いではおらず、ごくたまに予知夢を見る程度のものだったらしい。

しかし、マリアの母、つまりメアリの祖母ははっきりと未来を視ることができる人物であり、マリアが王と結ばれ王妃になることを予知していた。

そして、その先の未来にあるふたつの不幸も。


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