一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
血を継ぐ。
それが王家の血を継ぎ、王女として生きる道を選ぶということに他ならない。
ただのメアリとして生きるか。
メアリ・ローゼンライト・アクアルーナとして生きるか。
ペンダントを手の中に包むようにすると、ジョシュアはメアリの頭を優しく撫でる。
「メアリ。メイナードは元々、メアリの命を奪う者が判明次第良きところで自分が父であることを告げるつもりだったんだよ。そして、どこで生きたいかを選ばせるつもりでいたんだ」
けれど、メアリがいなくなったことで炙り出しは難航し、いまだ判明はしないまま。
危機は去ったのかわからないが、メアリの成長を近くで見守り続けた王は、メアリが抱える父親に会えない寂しさを感じとっていた。
だから、決めていたらしい。
十八歳の誕生日には、ルクリアの花を自分の手で渡し、父だと告げると。
そして、メアリが望む未来を歩ませてやりたいと。
「なのに、肝心のルクリアが今年は手に入らなくてね」
「俺は毎日花屋に通って入荷の確認をさせられていた」
「僕もだよ。診察の途中で花売りに会ったら売ってるか見てくれって」
困ったように眉を寄せて微笑むふたりの会話に、メアリも涙ぐみながら薄く笑んだ。