一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
ルクリアなら城下町の民家の脇に少しだけ咲いていたのを思い出す。
もしそれを王が手に入れることができたなら、未来は変わっていたのだろうか。
……きっと、変わらなかっただろうとメアリは思う。
変えることができるとすれば、ヴラフォスの罠に繋がる何かを見つけるか、メアリが視た時だ。
……と、そこまで考えてメアリの脳裏に満月の夜に見た不思議な夢がよぎる。
(あの夢の中に、王様の姿はなかった……)
もしあれが、王の死を予見していたものならば。
「あ……わ、私……ごめんなさい……」
突然動揺し始めたメアリに、ジョシュアとイアンは瞬きを繰り返した。
「メアリ、どうしたんだい?」
「ジョシュア先生、私、夢で視たんです」
そうしてメアリは、僅かに震える声で視た夢の内容を告げる。
どこに向かっているかはわからないが、自分が白馬に跨っており、周りには近衛騎士の者たちやイアンがいたこと。
そこに王の姿がなく不思議に思って目覚めたことを。
話を聞いたジョシュアは「そうか」と呟くと、腰をかがめてメアリの目線に合わせる。
「大丈夫。それだけじゃメイナードの死に関連付けることは難しい。だから君のせいではないよ」
宥めるように背中をさするジョシュアに続き、イアンも頷いた。