一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「まして、それだけではヴラフォス帝国の罠に気付けはしない。……いや、そもそも王も懸念しこちらも警戒していたんだ。それでも、あの数の兵を隠していたのは想定外だった」
イアンは思い出しながら苦々しい顔で語る。
そしてそのまま立ち上がるとメアリに頭を下げた。
「あなたの父上を救えず、申し訳ありませんでした」
それは、メアリを一国の王女として扱った謝罪。
けれど慣れていないメアリは慌てて立ち上がり「やめてください。いつも通りで結構ですから」とイアンに頼む。
「私は、王様の口からきちんと聞くことができました。父と母の愛情を知ることができました。正直、今はまだどうすればいいのかわからないけれど……ちゃんと、考えます」
だから少しだけ時間をくださいと今度はメアリが頭を下げる番で、イアンは首を縦に振った。
「アクアルーナのしきたりでは、二週間は喪にふくさなければならず、その後王位継承の戴冠式を執り行うのが通例です」
「その間に、結論を出せということですね」
メアリの返答にイアンはしっかりと頷く。