一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「王が存命ならば急かすことはなかったのだが、申し訳ない」
「メアリ、僕は君を本当の娘として迎えることを厭わないよ! だから変に気負わ」
「それとメアリ」
「ちょっとイアン。僕まだ喋ってる途中」
「もし王位を継承するとしても、君の予知能力については隠してくれ」
子供の頃であれば思わず口をついて出してしまう懸念が大いにあったが、今ならばそれもない。
隠していれば暗殺のリスクは格段に減るはずだと告げられ、メアリは少しの恐怖を胸の奥底に押し込めるようにして「お約束します」と答えた。
そこでようやくイアンは肩の力を抜き、再び椅子に腰掛けると紅茶に口をつける。
そして、モノクルを外してテーブルに置くと、俯き目頭を押さえた。
そんな彼の肩を励ますように軽く叩いたジョシュアもまた、仕事の続きに取り掛かる。
静かになった室内。
まるで王の死を嘆いているような雨はまだ勢いを失わず、医務室の窓を朝陽が昇るまで濡らしていた。