一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
──ジョシュアの優しい声にうたた寝から起こされたメアリを待っていたのは、帰還した近衛騎士や兵たちの治療だった。
王の近くで警護を任させていた騎士や兵士は残念ながら数名亡くなってしまったと聞かされた時、メアリは真っ先にユリウスやウィルたちのことではと肝を冷やした。
けれど、そのすぐ後によく交流のある騎士たちは軽い怪我のみで、現在は修道院や騎士宿舎で手当を受けていることを知り安堵する。
メアリはジョシュアの指示に従いながら、悩む暇も悲しみに暮れる暇もなく重傷者の対応に追われ、気付けばあっという間に一日が過ぎて夜を迎えた。
「メアリ、少し落ち着いたから食事をとっておいで」
重傷者の治療がひと段落した頃、ジョシュアは騎士の腕に包帯を巻いているメアリに休憩を勧めた。
「先生は?」
「僕もあとで食べるから大丈夫」
メアリは手当を終え、騎士に「これでいいですよ」と声をかけてから、肩を回して疲れをほぐすジョシュアに頷いてみせる。
「わかりました。なるべく早く戻りますね!」
「ああっ、なんて優しいんだメアリ。でもいいよ、ゆっくりしておいで。今は自分を優先するんだ」
無理をし過ぎてはいけないよと労りの言葉をもらい、メアリはジンとする胸元をそっと両手で押さえた。
「先生……ありがとう」
「君の感謝の気持ちだけで僕はお腹いっぱいだよ」
柔らかな微笑みを浮かべたメアリに、ジョシュアが感極まりながら言葉を発した直後、ぎゅるるとジョシュアのお腹が鳴る。
「やっぱり早く戻りますね」
メアリがクスクス笑うと、ジョシュアが「僕の腹のクソが!」と悪態をついて自分の腹をペシンと叩く。
それをまたメアリは笑ってから、医務室を出た。