一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
向かう先は大食堂。
城で働く者たちが自由に使うことができる食堂だ。
食堂の奥に隣接する厨房も広く、真夜中以外は数名の料理人が仕事に従事していて、メアリも医務室で手伝う時はお世話になっている。
(あまりお腹は空いてないけど、少し食べないと頭も回らなくなっちゃう)
これから自分がどうするべきか。
メアリは正直なところ自分が王家の血を引いているという実感はない。
ただ、イアンから聞いた話や王と交わした最期の会話、それにルクリアの花のことを鑑みると疑うべき理由も見つからないのだ。
何より、これまで培ってきた王との思い出を振り返ってみれば、そこには父親としての愛情が滲み出ていたことに気付かされる。
王の優しく大きな手を思い出し、鼻の奥がツンとするのを唇を噛んで誤魔化しながら、雨露に濡れた夜の中庭を横目に柱廊を歩いていた時だ。
「メアリ」
背後から名を呼ばれて振り返ると、そこには騎士服のみを纏ったユリウスがいた。
「ユリウス様! お帰りなさい」
パッと花が咲くような笑顔で駆け寄るメアリに、ユリウスは瞳を細め微笑んだ。