一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「ただいま。ジョシュア先生の手伝いかな?」
「はい。ひと段落ついたので、食事をとりに食堂へ行くところです」
「そうか。お疲れ様」
労いの言葉を口にしたユリウスだが、メアリはその顔が少しやつれた気がして体調や気分がすぐれないのではと心配になる。
王の死だけでなく、仲間や部下も傷ついたのだ。
当然、その心労は想像に難くない。
「ユリウス様こそお疲れ様です。あの、お怪我はありませんか?」
「掠り傷程度だよ。心配してくれてありがとう」
医務室で手当を施した騎士たちから、各部隊長は素晴らしい活躍をしたのだとメアリは聞いていた。
中でも傷を負った王を逃がす為に殿を務めたオースティン騎士団長の猛攻と、それにより分散した敵を鮮やかに撃破していく第三部隊長のユリウスは、同じく殿として残った彼らの部下たちに更なる尊敬の念を抱かせたらしい。
「騎士の方々からユリウス様の活躍を耳にしました。さすがですね」
少しでも気分が上がればとの想いもあり賞賛を口にしたメアリだったが、ユリウスは美しい顔をゆるく左右に振った。
「運が良かっただけだ。でもその運は、俺ではなく王の為に使われるべきだった。死ぬべきは王ではなく、きっと」
続く言葉を予想できたメアリは、両手をユリウスの唇に押し当ててそれ以上語るのを無理に止める。
「ダメですよ、ユリウス様。私は、今あなたがこうしてここにいることが嬉しいです。王様のことは、とても……とても、悲しいですけど」
それでも、皆が帰ってきてくれたことが嬉しい。
メアリがそう告げると、ユリウスは眉をハの字にして微笑する。