一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
一夜明けて──。
重傷患者の容体も安定してきた為、医術の心得を持つ修道院の者たちに任せ、メアリとジョシュアは一度診療所に戻った。
入浴と仮眠を済ませ、遅めの朝食をとっていた時だ。
一階からのノックの音が聞こえて、ジョシュアはスプーンを置こうとしたメアリに食事を続けるように言い残し席を立つ。
慣れた足取りで階段を下り玄関扉を開けると、そこに立っている男を見てジョシュアはからかうように目を細めた。
「おーやおや、オースティン。ようやく治療を受ける気になったのかい?」
「元々大した怪我じゃない。自分でどうにかできるさ」
「そう言って昔、化膿させて悪化したのは誰だっけ?」
「俺だよ」
懲りた様子もなく笑みを浮かべた騎士団長に、ジョシュアは呆れて溜め息を零す。
「で、どうしたの?」
「イアンから聞いた。メイナードがメアリに話したと」
「あー、待った待った。その話なら中で頼むよ」
ジョシュアは「誰かに聞かれたらどうするんだ筋肉バカめ」と愚痴りながら家の中にオースティンを招き入れた。