一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「なんですか隊長」
「この者たちはお前に任せるよ」
「リョーカイっス。そういえばメアリさん、さっき何であのタイミングでしゃがみ込んだんスか?」
弓を放ったのはセオだったようで、彼はメアリが自分の存在に気付いていたのではと感じたらしい。
問われたメアリは苦笑した。
”視えた”からだとは言えないのだ。
この力のことは、限られた者にしか話すことは許されていないから。
「こ、怖かったので、咄嗟に。なので、偶然なんです」
ただ、野盗らの背後にユリウスがいたのは見えていたと告げると、セオは特に疑うでもなく「そうなんスね」と笑顔で納得して屋根の上から器用にこちらに向かって降り始めた。
まるで猿のような身軽さだと感心しつつも、ユリウスへと視線を移す。
「ユリウス様、助けていただいてありがとうございます」
「どういたしまして。ジョシュア先生が心配してらしたよ。君がまたどこかで迷子になっているかもしれないと」
「ご、ごめんなさい……ご迷惑をおかけして」
「迷惑どころか、君を探しに出たおかげで街の人を困らせていた悪事がひとつ減ったよ」
俺の手柄もひとつ増えたしねと茶目っ気たっぷりに微笑むユリウスは、いつも通りの彼だ。
実は、メアリはユリウスの戦う姿を目にするのは初めてで、正直なところ少し驚いていた。