一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「団長が無能なら部下も無能か」
この言葉に、普段は明るく穏やかな気質のメアリも頭に血がのぼりそうになった。
無能でなかったから死者が最小限で抑えられたのではないかと沸き上がる怒りを内に留めるよう歯をくいしばる。
もしもアクアルーナがランベルト大侯爵の意のままになってしまったら、正当に評価されるべき人がランベルト大侯爵のさじ加減で評価されなくなるのではと、メアリは国の行末に一抹の不安さえ感じた。
メアリの脳裏に王である父の言葉が浮かぶ。
『私とマリアが望むのは、お前が幸せであることだ。だから、使命や役割に囚われず、お前が望む未来を、進みなさい』
メアリが夢で視た光景は、まだ訪れていない。
あの未来を辿れば、どうなるのか。
あの未来を辿るには、どうすればいいのか。
視える未来はいつだって不明瞭で、その時になって気付くことの方が多い。
けれど、メアリが今望むことは彼らを窮地から救うこと。
願う未来はランベルト大侯爵の思惑が蔓延るアクアルーナではない。