一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
いつの間にか落としていた視線に気付き、メアリは拳を握る。
(下ばかり見ていたらダメだ。目の前に、周りにある大切な者たちを守れなくなる)
とにかく今自分ができることをしようと顔を上げ肺いっぱいに空気を吸い込んだ。
(進もう。父様が守った国を、人々を、守る為の道を)
「王を守れずして近衛騎士を名乗るとは片腹いた」
「それ以上はやめてください」
突如、室内にはひとりとしていないはずの女の声に皆が目を見張る。
やがて扉を開いて立つメアリの姿を確認すると、イアンとオースティンを除く者たちが訝しげに首を傾げた。
ユリウスも蜂蜜色の瞳を丸くし、ランベルトに真っ直ぐな視線を送るメアリの様子を伺う。
「どうか、王様が信頼し側に置く者たちを侮辱しないでください」
イアンや騎士たちを庇う少女に、ランベルトは心当たりがあった。
「お前は……ジョシュア殿の助手の……」
ランベルトは幾度か体調の悪い時にジョシュアの世話になっており、その際に薬を袋に詰めるメアリを見かけていた。
そして、時折メイナードと共にいるのも何度か目にしたことがある。