一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
地位も持たぬただの小娘が何故でしゃばるのかと、ランベルトは眉根を寄せた。
「私に意見するとは、王に少し目をかけられて勘違いでもしたのかね。もしくは、懸想している騎士でもいるのかな」
小馬鹿にする態度で今度はメアリをも侮辱し始めたランベルトに、ユリウスは目を鋭く細める。
止めに入るべきかと、ユリウスの双眸が再びメアリを捉えた。
愛らしい顔を悲しげに歪めてはいないかと心配したユリウスだったが、メアリは凛とした佇まいでランベルトを見つめ、薄い唇を開く。
「ランベルト大侯爵様。どうか、それ以上は謹んでいただけませんか」
「黙れ小娘が」
苛つきを隠すことなくメアリを咎めるランベルトに、メアリは父譲りの茶色い瞳を向け続ける。
「そうです。私はひとりでは何もできない小娘です。でも、大切な人たちが傷つかないように、笑顔でいられるようできることがあるなら……王様の守ってきたものを、今度は、私が皆さんの力を借りて守っていきたい」
メアリがイアンとオースティンを見ると、ふたりは感慨深そうに微笑んだ。
そのやり取りを見守っていたユリウスは、驚愕の表情でメアリの言葉のひとつひとつを噛み砕き、瞳を揺らした。
「まさか、君が……」
思わず零した声は誰に拾われることもなく、張り詰めた空気に溶けて消える。