一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「ジョシュア先生が騎士宿舎の救護室で待ってるよ。送っていくから、荷物を貸して」
「ええっ、そんな悪いですよ!」
「いいから。気持ちが落ち着くまでは遠慮なく俺を頼って」
そう言って、まだ少し震えているメアリの手から布袋を優しく奪い取ると、野盗を縛り上げるセオに軽く挨拶をしてから歩き出した。
メアリはセオに「ありがとうございました」とお辞儀をし、急いでユリウスの背中を追う。
ユリウス・フレーヴといえば、このアクアルーナ王国では名の知れた騎士だ。
誉高い近衛騎士団、第三部隊の隊長。
物腰はつつましく、高貴なプリンスを思わせる気品と多くの女性を魅了する甘やかな顔立ち。
上品な印象から「白銀の騎士」とも呼ばれるユリウスが、先刻見せたような冷たい面も持ち合わせているのは、メアリには意外だった。
普段の柔らかなユリウスと、騎士として容赦なく敵を切るユリウス。
どちらが本当の彼の姿なのだろうか、などと考えていたら「メアリ!」とユリウスから強めの声で呼ばれ、メアリは肩を跳ねさせた。
「は、はいっ!」
「そっちじゃない。宿舎はこっちだ」
形のいい眉を寄せ苦笑しつつもユリウスが指差す方向は、メアリが進もうとしていた方とは真逆の方角。
(ああっ、またやってしまうところだった!)
ユリウスと共に歩いていても道を間違えそうになり、メアリは羞恥に耳まで赤く染めた。