一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
ランベルトはメアリが発した言葉の意味に気づかず、青臭い戯れ言だと半笑いを浮かべた。
「素晴らしい心がけで結構。しかし君が救うべきは病人や怪我人だ」
「今まではそうでした。けれど、決めたんです。私は、守るべきものの為に、私が本来辿るべきだった道を選び進みます」
(例え、祖母が視たという暗殺者が、まだ私の命を狙い、脅かすとしても)
今の自分なら必ず変えていける。
メアリはそう信じ、恐怖を振り払うようにペンダントの仕掛けをジョシュアに教えられた通りに解く。
『君がもし、メイナードの娘として生きることを選んだ時の為に、仕掛けの解き方を教えておこう』
ペンダントの中央に施された小さな宝石を押し込みながら下の部分を回転させると、カチリと小さな音が鳴った。
そして、リングを収めるケースのように開くと、中から現れたのは月のごとく丸い宝石。
透き通る湖にも似た色をした宝石の真ん中に浮かぶのは、アクアルーナの王位継承者に引き継がれる月と羽がモチーフの紋章。
世界にふたつとないそれは、生まれたばかりの王女が誘拐された時に共に奪われたはずのものだ。