一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
ランベルトや他の重臣たちが一斉にざわつく中、メアリの鈴を転がすような声が響く。
「私は、メアリ・ローゼンライト・アクアルーナ。私の命を脅かす者から守る為、父メイナードと母マリアが隠したただひとりの子です」
身分が明かされると先ほどよりもさらに室内の騒がしさが増した。
「まさか、いやでも確かに言われてみれば瞳の色は王と同じ」
「よく見ると顔もマリア王妃に似ているではないか」
重臣たちは口々にアクアルーナの血を引く者として、確かな繋がりを見出そうとする。
その光景をルーカスは口笛をひとつ鳴らして楽し気に眺め、横ではユリウスが喜んでいるとも悲しんでいるともとれる複雑そうな表情でメアリを見つめていた。
正統なる後継者が戻られた。
重臣の誰かがそう口にすると、さきほどまで重かった空気は一変。
皆の瞳に明るさが宿っていくのを見て、メアリは密かに胸を撫でおろす。
少しも受け入れられず、疑われて牢獄にでも閉じ込められたらどうしようかと内心冷や冷やしていたのだ。
とにかく、自分が立ち上がることによってまずはイアンとオースティンを救えればいい。
これからのことはふたりに相談しつつ、成すべきことを成さねばとペンダントの中に納まる宝石に視線を落とした時だ。
「ま、惑わされるな! 宝石はどこかで奪ったのであろう! 衛兵! 今すぐこの娘を切れ!」
ランベルトが激しい怒声を張り上げ、自分の後方に控えていた衛兵を押し出した。