一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「し、しかし」
「使えん奴め! 貸せ!」
ランベルトは吐き捨てるような口調で鎧に身を包んだ衛兵の腰から長剣を引き抜くと、鬼の形相でメアリへと突き進む。
騒然とする場に、イアンが「オースティン!」と自分よりもメアリに近い騎士団長の名を呼ぶが、オースティンが「心配には及ばん」と口にしたその時だった。
──キン、と。
耳をつんざくような高い音が響く。
メアリを背に庇い剣をかまえ、ランベルトが握る刃を受け止めているのは、白銀の騎士。
「ユリウス様!」
「そのまま俺の後ろに」
鍔迫り合いの体勢で背を向けたままのユリウスからは安心させるような優しい声が発せられ、ほっとしたメアリは「はい!」と信頼を寄せて頷いた。
「ぐぬぬ、なぜ邪魔をするかっ」
忌々し気にユリウスを睨みつけるランベルトは剣の扱いに不慣れなせいで持つ手がぶるぶると震えている。
ユリウスは薄い笑みを浮かべ、剣を薙ぐように払うと恐れ後ずさったランベルトの手から呆気なく長剣が床に落ちた。