一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
覇気をなくしたランベルトは、肩を落とした背中をルーカスに見張られおとなしく回廊へと消えていく。
それを見送るイアンの瞳がメアリに向けられると優しく細められた。
「よくぞ、決意してくださいました」
イアンに答えようとしたメアリだったが、ふらりと足元から崩れ落ちそうになり、咄嗟にユリウスに支えられる。
端整な顔に愁眉を寄せ、顔を覗き込むユリウスにメアリははにかんだ。
「ご、ごめんなさい。腰が抜けてしまって」
ランベルトの姿が見えなくなり、緊張の糸がほどけたらしい。
長い息を吐き出して安堵するメアリの姿に、ユリウスは頬を緩める。
「君は……さっきまであんなに堂々としていたのに」
「そう見えていたなら良かったです」
笑みを浮かべたメアリはユリウスに支えられて立ち上がった。
すると、オースティンはひとつ頷き嬉しそうな笑顔を見せる。
「ご立派でした」
「騎士団長様」
「メアリ王女。約束通り、我々は貴女の守るべきものと貴女を全力で守ると誓いましょう」
オースティンの言葉を合図に、イアンを始めとした重臣や騎士たちが一斉に膝をつきこうべを垂れる。
ユリウスも、一歩下がり忠誠を誓うため片膝をついた。
父、メイナードがかしづかれる光景は何度か目にしたことがあり、また自分もそうしてきたが、まさかこんな日が来ようとはとメアリは戸惑う。
何か答えねばと必死に言葉を探すも、王女らしい振る舞いなどわからないメアリはとにかく頭を下げた。
「ふ、不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」
まるで嫁ぐ娘のような挨拶に、皆は口元に優しい笑みを乗せる。
一番近くに跪いているユリウスもまた、いつも通りのメアリであることに、そっと笑みを零していた。