一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
(本当に、自分でも嫌気が差すほどの方向音痴さだわ)
スラム街に関しては全く道がわからないので迷うのは仕方がないが、もうすでに城下町に入ったのだ。
夜とはいえ、城下町にはランタンが灯り、辺りを優しく照らしているし、月明かりがあれば遠くにアクアルーナ城も見える。
メアリが住むジョシュアの診療所も、ユリウスたちの居住である騎士宿舎も城からそう遠くない。
この辺りは普段あまり歩くことはないといえど、城を目印に歩けば迷うこともないはず。
だが、メアリは迷ってしまうのだ。
「なんかもうすみません……」
「相変わらず、君は迷子の天才だな」
「よ、よく知っている道は大丈夫なんですよ?」
診療所から城までの道のり。
城や診療所から騎士宿舎への行き方も迷うことはない。
様々な店が立ち並ぶ中央広場も、仲のいい友人が働く酒場も、慣れ親しんだ場所へなら間違うことなく行ける。
けれど、いつもと違う道を使った途端に迷ってしまうのだ。
城を目印にしていても、どこかの角を曲がるとメアリは方向がよくわからなくなり、結果、迷う。