一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「ありがとうございます」
イアンは「王女が簡単に頭を下げてはならない」と窘め顔を上げさせると他に質問はないかと問う。
「多分、大丈夫です」
何かあればまた相談させてくださいと伝えると、イアンは頷いた。
「では、私はこれで。護衛の騎士については後ほどオースティンから」
「はい」
一礼してイアンが出て行くと、メアリは肩の力を一気に抜き奥の部屋にあるベッドルームへ移動する。
柔らかな絨毯の上に乗る大きな天蓋つきのベッドは女性らしいデザインでまとめられ、メアリは肌触りのいいシーツの上に寝転がって体を休めた。
回廊沿いの会議室に入室してからどれほどの時間が経ったか。
ふと白いレースのカーテンが飾られる窓を見やると、空の色は茜色へと変わろうとしている。
(ジョシュア先生は大丈夫かな……)
過保護なジョシュアのことだから、きっと寂しがっているのではと心配になる。
何より、こんな広い部屋にいると自分も心細く、いつもの場所に戻りたいという気持ちが生まれてきてしまう。
けれど、王女としての道を決めたのは自分。
甘えるばかりではだめだと弱気になる自分に言い聞かせ気合を入れて起き上がると、これから毎日過ごすことになる自室に早く慣れるよう、部屋の中を調べ始めた。