一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「婚約!?」
飛び出そうなほどに目を大きく見開いたメアリは慌てふためき何度も首を横に振る。
「返します! 受け取れません!」
「けれどメアリ、贈り物を返されては相手の心もプライドも傷つけてしまう」
「それは……」
本意ではないけれど、とそこで一度言葉を切ったメアリはやはり頭を振る。
「でも、貰うわけにはいきません」
煌びやかなドレスも、髪飾りも、パンプスも帽子も、顔も知らない相手から受け取ることなんてできない。
まして下心があるとわかった以上はなおさらだ。
「例えばそれがメアリの一番欲しいものでも?」
「一番、欲しいもの?」
「そう。君の欲しいものは何?」
ユリウスに問われ、メアリは窓の向こうで暮れゆく空を眺めながら熟考する。
今、自分が求める物は何か。
メアリは元々あまり物欲がなく、現状で満足するたちだ。
必要なものは欲しいと思ったりはするが、それは生活に必要だからであり、そんなメアリを見かね、ジョシュアが機を見てプレゼントしていた。
なので、誕生日にも何が欲しいかと尋ねられる度いつもどうにか捻り出してきたメアリは、ユリウスの質問にやはり思い浮かぶ物はない。