甘く抱いて、そしてキスして…【完】



「翔太郎!」
私はこっちこっちと興奮気味に手を振った。

翔太郎の車が私の目の前で、止まった。

私は目を疑った。
そして、固まった。
なんで?


「ほ、ほ、穂乃香さん、どうしたんですか?」
心の動揺を隠しきれない。


「あ、ごめんね、翔ちゃん、借りちゃって。ちょっと友達に会うから、郊外のレストランまで送ってって頼んじゃった」


「………あ、そうでしたか。」


「美園ちゃんは、体調悪いの?」
心配そうに穂乃香さんは聞いてきた。

「あ、あー、ちょっと検査に来ただけです。大丈夫です」
笑って誤魔化す。



「早く乗れ」
翔太郎がイライラし始めた。

「はい」

ってなんで私が後部座席?
助手席は、彼女の席じゃないの?


私も思わぬ出来事にイラつく。




車は勢いよく、動き出した。


話せない。
穂乃香さんいたら、やっぱ話せないよ。

2人は、仲良く楽しそうに話をしている。



私は無言になった。






「美園ちゃん、どうしたの?」
不意に聞いてくる穂乃香さん。


「あーあ、眠いだけです、すみません」






何分経過しただろうか?

私は本当に眠ってしまっていた。



「翔ちゃん、ありがとう。美園ちゃんによろしく」

「ああ、楽しんで来いな」


バタン


私は、車のドアが閉まる声で目を覚ました。


ん?
目をパチクリさせながら、欠伸をする。


「美園、大丈夫か?前に来るか?」


「……うん」

私は、まだ穂乃香さんの甘酸っぱい匂いのする助手席に座った。
椅子がまだ暖かい。


「さぁ、行くかー」

「うん」

「あれ、そう言えば、話があるんじゃなかった?」

「あ、うん、ちょっと公園とかないかな?」
私は何となく、車の中で話す気力がなくなった。

「ん?公園?5分くらいしたら、大きくはないが、景色がよい綺麗な公園があるよ」


「ほんと?そこそこ行きたい!」
少し元気を取り戻した私。


「了解」
翔太郎は、優しく答えてくれた。


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