甘く抱いて、そしてキスして…【完】
第7章 冬期講習に向けて
第1節 嫉妬
「ただいま、お疲れ様です」
私はバタバタと塾に戻ってきた。
「お疲れ様です」
お茶目な笑顔を見せる真田先生に、少しホッとした。
「真田先生、さっきは、いきなりごめんね。ありがとう」
私は心から感謝の意を見せた。
「大丈夫です」
どこまでも優しくしてくれる。
「あ、新しいバイト講師5名くらい紹介ありそうです」
「本当に?良かったーちょっと荷物置いてくるね」
「はい、わかりました」
私は2階へいつものように駆け上がる。
「あークルミ、翔太、お腹空いたね。今ごはんあげるねーあ、あーひまわりの種が無くなっちゃう。そうだ、翔太郎に帰り道、買って来てもらおう!」
電話、電話……
私は鞄から、スマホを取り出した。
ブルブルブルブル
ブルブルブルブル
「もしもし、翔太郎?あのね……」
「あー美園ちゃん、穂乃香だけど、翔ちゃん、運転中、どうした?」
私は驚愕した。
私の胸の奥に何か不快なものが強く突き刺さった。
「…」
「美園ちゃん、なんか用だよね?」
なんでまた穂乃香さんがいるの?
なんで穂乃香さんが翔太郎の電話にでるの?
なんで穂乃香さんは、翔太郎から離れてくれないの?
なんで?
この先もずっとこうなの?
「あ、あ、大丈夫です」
私は慌てて電話を切った。
なんでよ?
やっぱりやだ。
やだよ。
翔太郎のバカ…
限度があるでしょ?