甘く抱いて、そしてキスして…【完】
「綺麗だなー」
目の前には、大きなクリスマスツリーが飾られていた。ただ酔いしれる余裕はなかった。

街はクリスマスイブとあって、たくさんの人。山のような人混みを魚のようにするりとすり抜け、私は岡田百貨店に着いた。

そして、私の大好きなブランド、CAROLへと向かった。
CAROLは、メンズ、レディースからも人気のブランドである。


「わぁーここもすごい人……」
入場制限がかかる一歩手前だった。


私の目的は腕時計。

以前、翔太郎が、そろそろ新しいの欲しいなーと言っていたからだ。
それに、腕時計なら、ずっと身につけてもらえるし。


「いらっしゃいませ。腕時計、お探しですか?」
CAROLの服を来て上品な接客をする店員さんは、指先もキラキラ輝いている。


「はい、クリスマスプレゼントで、何かオススメありますか?」
どの腕時計も素敵で目移りしてしまう。

「この辺りはいかがでしょうか?特にこちらは、人気商品で、現品のみです」
丁寧に商品を取り扱う店員さん。

「うーん、あーこのブラックの時計もいいですね?」


「こちらも、色々工夫されております。」


「どうぞ、手に取ってご覧下さい。」


「はい、ありがとうございます。うーん迷うなぁー」
いつになく真剣な眼差しで、腕時計を選び出す。


何度も何度も、私の細い腕に合わせてみて、鏡とにらめっこしている。





「やっぱこのダイヤが散りばめられたブラックの腕時計にします。お願い致します」


「はい、かしこまりました。ありがとうございます」


ずいぶん高価な買い物をしてしまったが、私は大満足だった。
翔太郎に喜んで欲しい…
ただその気持ちでいっぱいだった。



それから、私は地下へ降りた。

料理は正直作る時間はない。

私は、用意されたオードブルと、チキン、シャンパン、世界一有名になったとされる噂のクリスマスケーキを買った。



これ以上、荷物は持てないっていう限界まで買い物をした。


あー重い……
買いすぎたな。
重すぎる……


仕方ない、タクシーで帰ろう。


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