甘く抱いて、そしてキスして…【完】
私達は、1枚の紙を大切に2人で持ちながら、市役所の受付窓口まで来た。
「よろしくお願いします」
2人で、深く頭を下げた。
「はい、少しお待ち下さい」
書類に不備がないか確認しているようだ。
「はい、受理致しました」
私と翔太郎はこの瞬間から、夫婦になった。
私は、[樋口美園]になった。
「翔太郎」
公然の場で、思わず、抱きついてしまう。
「おい、落ち着け、[樋口美園]」
「だってー」
翔太郎の周りをうさぎのようにぴょんぴょん飛び跳ねる。
「行くよ」
翔太郎の声が、天使の囁きにさえ聞こえる。
人生でただ1回だけの経験は、私をどこまでもどこまでも高く突き上げた。
瞳からはハートがこぼれ出す。
私と翔太郎は本当に夫婦になったんだ。