甘く抱いて、そしてキスして…【完】
「わぁー、オムライスもトマトソースから、デミグラスソースに変わったんだ!」
目の前のオムライスに目をキラキラ輝かせながら、翔太郎を見つめた。
「だな。俺はケチャップで、また何か書きたかったな。『愛してる』とかね」
「…うふふふ」
ちょっと何だか照れてしまう。
「ケチャップ借りようか?」
「本気?」
「うん」
私がまさかと思った瞬間、
「すみません、ケチャップありますか?少しだけ貸して貰えませんか?」
翔太郎が大声を出した。
「はい?あ、わかりました。お待ち下さい」
不思議そうに見つめる店員さん。
「はい、お待たせ致しました」
「美園、お皿貸して」
私は、言われるがまま、翔太郎にオムライスのお皿を渡した。
「あいしてる」
翔太郎は、お皿の上の隙間に、綺麗に赤い文字を書いてくれた。
じゅわじゅわ伝わる翔太郎からの熱い想い。
[プリンス][プリンセス]と互いに書きあった日を思い出させる。
翔太郎、あいしてる。
ありがとう。
「貸して」
今度は、私が翔太郎のお皿を手に取った。
「クルミ」
赤い文字が眩しく感じられた。
翔太郎が、私に初めて言い放った言葉。
私達は、この『overseas』で、出会ったんだ。