甘く抱いて、そしてキスして…【完】
バタン……


ん?翔太郎?
私は寝不足もあり、ついウトウトしていた。

え?あれ?
私、ベッドで寝てる……
翔太郎が運んでくれたんだ!

私は目を擦りながら、大きな欠伸をし、慌ててリビングへ向かった。

翔太郎?ん?

翔太郎はいない。気のせいだったのかな?
なんか音した気がするんだけど……

あ、いや、翔太郎は帰宅したはず。
私はベッドでは絶対に寝てなかったもん。

外から光がもれている。

あれっ、もう明るい……朝だ。

だいぶ暖かくなって来たけど、まだ朝は少し冷える時がある。
私は、即座に太陽の光からエネルギーをもらうため、カーテンをサッと開けた。

眩しさがたまらなく、私の心を魅了する。

ふと、キッチンを見ると、白いお皿とグラスがきちんと洗ってあるのが見えた。

ポ、ポトフ…

私は鍋の蓋を開けた……空っぽだ。

食べてくれたんだ、翔太郎。
よかった。
なんだかホッとする。

鍋までは洗わないのがいかにも翔太郎らしい。
そんな翔太郎がたまらなく愛おしく感じる。


あ、あ、翔太郎は?どこ?


「翔太郎?」
私はバタバタと1階へ降りて行った。

塾内を歩き回る。
「翔太郎、翔太郎」と叫びながら。




ス、スマホだ…

今度は、ドタバタと2階へ駆け上がった。
そして、テーブルに置いてあったスマホに勢いよく、手を伸ばした。

がっしりと掴み、画面を開いた。

LINE、LINEが来てる!

紛れもなく翔太郎から。

《ハム翔太郎》の文字が太陽の光で眩しく輝いて見える。


『ポトフ美味しかった。ごちそうさま。
ちゃんとベッドで寝ろよ』

『あと、怒ってないから。でも、今日も帰りは遅くなる』


翔太郎、ありがとう。ありがとう。よかった。よかった。
私は何度も同じことを呟いた。


ただのLINE、されどLINE…

こんな一瞬で、画面を見ただけで、私に幸福感と安堵感を与えてくれるんだ。


私はスマホを画面を何度も何度も綺麗に拭き取った。

そして、
『おはよう、翔太郎、ポトフ全部食べてくれてありがとう。
今日は、日曜日なのに、あまり無理しないで仕事頑張ってね。』

私は返信した。
そして今日はすぐに{既読}を確認出来た。


私は嬉しくてすぐにクルミの所へ行き、
「クルミ、大丈夫だったよ」
そう話しかけた。
クルミはいつもの愛らしい、つぶらな瞳で、私を見つめてくれた。


よし、今日は休みだから、出かけよう。

私はカフェラテをゆっくりと飲みながら、今日一日の予定を構想し始めた。


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