甘く抱いて、そしてキスして…【完】
キラキラキラキラ……

まるで音を立てているかのように見事な野原から見える透き通った青い海…

「さあ、降りよう」
翔太郎は、目の前に全開に広がった田畑や野原、荒地の間の脇道に無造作に車を止めた。

翔太郎は、私の手をもう一度ギュッと握り、優しくゆっくりと手を離して車を降りた。

私も、翔太郎の背中を見ながら、慌てて降りた。
翔太郎は助手席の私のところまで迎えに来て、再び手を握ってきた。

翔太郎の指と私の指が強くぎっしりと絡められている。

「綺麗だろ!」
翔太郎は少し得意げに言った。


「うん、すっごい素敵!絶景だね」

「気に入った?」

「うん、海も見えるし自然に囲まれていて、本当に気持ちよいわ、ずっといられる」

「じゃあ、美園置いてこうかな」
ニヤリとしながら意地悪を言う翔太郎。

「もう……」
私はほっぺを膨らました。
翔太郎はそんな私のほっぺをを指で2回つつき、頭をいつものように優しく撫でてくれた。


「美園、実はここは、俺が生まれ育った場所なんだ……」


「え?」


「俺は1年後、ここに、この場所に【Second Homes】という行き場を失った子ども達を受け入れる施設を建設する。様々な問題を抱えた子ども達を受け入れて自立出来るように援助し、指導して行くんだ……そして、社会へとはばたかせる。」


私は目を丸くして、翔太郎の話を聞いていた。
翔太郎は私の想像を超えたことの出来る人なんだ。
本当に何でも出来ちゃうんだ。


「ね、ねぇ、聞いていい……?翔太郎はここで生まれ育ったの?ここには家が立ってたの?」

未だ半信半疑で、不思議な感覚と驚きを抱きながら、私は聞いた。


「そうだ」
翔太郎は力強く頷いた。

「俺は必ず成功する。必ず」
そう言って、翔太郎は私の手を離し、雑草をかき分けて、奥までどんどん入っていった。


だんだん背中が遠くへと進んで行く……
翔太郎は真っ直ぐ背筋を伸ばし逞しく歩いて行く……


「待って」

風と海と草木、鳥の鳴き声、様々な音が入り交じり、翔太郎は私の声に気づかない。


「翔太郎!」
まだ振り向かない。

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