甘く抱いて、そしてキスして…【完】
「ああ、いいよ、ちょっと待ってな」
翔太郎は私が歩きやすいように草木を力強く踏み倒しながら、私のとこに戻ってきて、手を差し伸べた。

「ありがとう」
太陽からの強い紫外線に私は目を細めながらも、翔太郎の手をしっかりギュッと握りしめた。

私達は草木をどんどん踏み続け歩き出した。

「どうだ、この位置は?」

「わぁーわぁー最高!あっちより、ミステリアスさが増すよ」

「だろ?じゃあ、美園一緒に撮るよ」

「翔太郎、もっと顔をくっつけてよ」

「え、こんな感じ?」

「そうそう」

「せーのっ」

カシャ、カシャ、カシャ、カシャ………

「何枚撮るのよ、あはは、ね、いっぱい撮ろうよ、この周り360度の景色!」

私は何事も無かったように無邪気にまるで子どものようにはしゃいだ。

カシャ、カシャ、カシャ……

「美園、こっち見て」

カシャ、カシャ…


「可愛い!最高の景色、じゃなくて、美園の幸せそうな笑顔!壁紙にしよー」

「え?見せて、見せて」

私はまるでお父さんにお願いごとをする少女のように振る舞う。
翔太郎がスマホを持ったまま、空高く手を挙げている腕にすがりつく。
何度も何度もジャンプをしながら。

翔太郎はわざと左右前後に向きを変える。

「あーん、意地悪」

私は思いっきり拗ねたふりをした。いや、本当に拗ねていたかもしれない。

すると、
「きゃぁぁぁ」

私は広い宇宙にどんと高く打ち上げられた。
まるでロケットだ。


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