甘く抱いて、そしてキスして…【完】




時刻は、20時00分、翔太郎の車の中のラジオがそれを知らせた。

私は不機嫌そうに座っている。

「美園、ごめん、やっぱり突然は嫌だった?」そう言って私の右手を優しく握りしめた。

私は振り払いたい気分。

「…」

「美園、怒ったの?」
かなり心配そうに見つめる。
そりゃそうだ、昼間の大はしゃぎと正反対になってるのだから。


「…違う……怒ってなんかない…」
強がる私。恋では、初めての体験。


嫉妬なんて言える訳がない。
重い女だと思われる。
だって、幼馴染なんだから。
きっと笑われる。

「ねぇー美園さあ、ひょっとして、妬いてる?」

ドキューン、見事に命中。
撃沈。
頭も心臓ももう限界だ。


な、なんで?
なんでわかるの?

「な、何言ってるの?ち、違いますー」


「あはは、可愛いな、そういうとこ、好きだな…」
翔太郎は照れることなく、むしろ満足げに私を見つめ、ギュッと手を握った。


私はギュッと握り返す。まるで、平気だよ、って言ってるかのように。
私の嫉妬心がばれないようにするために。


そして、私は、深く座り直し、窓から見える、星が降るような綺麗なキラキラした夜景を楽しんで、無心になっていった。


ありがとう、翔太郎。
今日はいろいろあったね。

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