甘く抱いて、そしてキスして…【完】
「美園、何があった?」
心配そうに私を熱く抱きしめてくれる翔太郎。翔太郎の大きな強い鼓動が私にも深く響き渡った。

「好きとか言われたのか?」

「え?」

なにそれ?
翔太郎は気づいてたの?
どういうこと?

「あいつがお前のことを、好きなのなんて見てたらわかるよ」

翔太郎は、そう言いながら私をまた強く抱きしめた。

「付き合ってって、言われちゃったよ。なんで教えてくれなかったの?」

私は、翔太郎の背中に回してある自分の両手で、翔太郎をトントン叩いた。


「だって、美園、気になっちゃうだろ?
それに、美園は俺の女だし。誰も入る隙間はない!」

わかったか、と言わんばかりに、さらに強く私を抱きしめる翔太郎。


「待って、じゃあ、社員の話、本気でしたの?どうすんの?」
私は、顔をグイッと上に上げて、翔太郎の表情を観察し始めた。


「あ、あれ、もちろん本気だよ。仕事と恋愛は別問題」

「えっ、でも、私、なんか不安…」
私は自信たっぷりな翔太郎から、目を逸らした。

ねぇーねぇー
翔太郎は嫉妬しないの?
嫉妬してくれないの?


「社員になるかは、あいつが決めることだ。美園は社長婦人になるんだろ!」


な、何?
今、なんて?

私は空高く風船のように舞い上がって行った。心も体もあちこち飛び散りながら……

幸せ、私は幸せなんだ。
翔太郎、嬉しい、嬉しいよ。


「…私は、翔太郎を信じてる。ついて行く」

もはや大音量の私の激しい鼓動、爆発してしまう、いや、爆発してしまえー


「いい子だ」
翔太郎は、私を優しく解放してくれた。


「今日は、お風呂一緒に入ろうか?」

「…」
私は全身真っ赤にして、コクリと頷いた。

あーぽかぽかする。
あ、自分が熱い、熱すぎる……


< 69 / 175 >

この作品をシェア

pagetop