甘く抱いて、そしてキスして…【完】
「こんにちは、お疲れ様です」
そこへ、入って来たのはなんと穂乃香さん。
「あ、お疲れ様です。今日は塾長と一緒ではないんですか?」
私は慌てて聞く。
「うん、今日は私は1人よ。美園先生と話したくて…」
そう言いながら、放心状態の立石先生を穂乃香さんはクールに見つめた。
「あ、俺は、一旦帰ります。」
慌てて荷物を持ち、入り口を勢いよく開け飛び出して行った。
何あれ?
うふふふふふ
「あ、穂乃香さん、私もずっと話したくて、何か飲みますか?」
私はスッキリした爽やかな表情で聞いてみた。
「ありがとう、じゃあ紅茶あるかな?」
穂乃香さんは、広いデスクのある方へ腰掛けた。
「今、入れてきますー」
私はバタバタ階段をいつものように駆け上がり、温かい紅茶をポットに入れて、今度は慎重に階段を降りてきた。
「お待たせしました。どうぞー」
「ありがとう。で、田辺さん、美園ちゃんでいいかな?」
色っぽい声で私の名前を呼ぶ。
「はい、もちろんです」
「美園ちゃん、翔ちゃんとは上手くやってる?」
え?
なんでそんなこと聞くの?
なんか胸がざわつく。
「はい、毎日楽しいです」
「そう、良かった。翔ちゃん、本当は、すごくいつも孤独で、なのに強がってて。だから、心配しててね」
安心したかのような穂乃香さん。私に初めて見せる表情だった。
「…はい、あの、私も聞いて良いですか?」
ちょっとだけ、心臓が、パクパクし始めた。
「いいわよ」
ニンマリしながら穂乃香さんは答えた。
「翔太郎の幼い頃はどんな感じでしたか?」
「…んー弱いくせに、いつも正義感あふれてて、やんちゃだったなぁー私の方が年上なのに、私が誰かにからかわれていると、私を必死で、助けてくれたかな。泥まみれになってね。すんごいおぼっちゃまなくせにね。」
穂乃香さんは、紅茶を飲みながら、話を続けた。
「でね、高校は別だったんだけど、私に変な虫がつくといけないから、大学は同じとこ行くって、勉強嫌いだったくせにめちゃくちゃ頑張ってたよ。で、合格した時には、ご両親から、私はお礼言われたりしちゃってー」
「あ、あのどんな両親でしたか?」
私は即座にその言葉に反応して聞いてみた。
「ああ、翔ちゃんは、顔はお母さんそっくりで、頑固で、妙に真面目なとこは、お父さんそっくりだったかな。とにかく、一人っ子だから、めちゃめちゃ甘やかされ、可愛がられていたよ」
そうなんだ。
やっぱり、穂乃香さんは何でも知ってる。
もしかして、あのことは?
「穂乃香さん、あ、あの、両親の死についても知ってますか?翔太郎は、謎の死と言ってますが…」
ふぅーと言わんばかりのため息をつく穂乃香さん。再び紅茶をゆっくり飲んだ。
「翔ちゃん、大変だったんだ。毎日毎日死にそうなくらい働いて……謎の死か、翔ちゃん、まだ諦められないんだ……」
珍しく顔色を暗くする穂乃香さんに、私は驚いた。
「諦められない?どういう意味?」
私は、全身、クエスチョンマークになった。
それは、あのお母さんからの手紙…遺書?
つまり、自殺ってことなの?
「ごめん、これ以上は、私の口からは言えない。ただ、私は翔ちゃん、弟みたいに大事に思ってるから、美園ちゃんにも、翔ちゃんを大事にして欲しい。本当に幸せになって欲しいんだ。あんないい奴いないから」
私は心に深く穂乃香さんの言葉が突き刺さった。そして、頭から、決して離れることのないこの光景。
「わかりました。ありがとうございます」
私は、なんて穂乃香さんは素敵な女性なんだと実感し、また穂乃香さんに強く深く打ちのめされた。
そこへ、入って来たのはなんと穂乃香さん。
「あ、お疲れ様です。今日は塾長と一緒ではないんですか?」
私は慌てて聞く。
「うん、今日は私は1人よ。美園先生と話したくて…」
そう言いながら、放心状態の立石先生を穂乃香さんはクールに見つめた。
「あ、俺は、一旦帰ります。」
慌てて荷物を持ち、入り口を勢いよく開け飛び出して行った。
何あれ?
うふふふふふ
「あ、穂乃香さん、私もずっと話したくて、何か飲みますか?」
私はスッキリした爽やかな表情で聞いてみた。
「ありがとう、じゃあ紅茶あるかな?」
穂乃香さんは、広いデスクのある方へ腰掛けた。
「今、入れてきますー」
私はバタバタ階段をいつものように駆け上がり、温かい紅茶をポットに入れて、今度は慎重に階段を降りてきた。
「お待たせしました。どうぞー」
「ありがとう。で、田辺さん、美園ちゃんでいいかな?」
色っぽい声で私の名前を呼ぶ。
「はい、もちろんです」
「美園ちゃん、翔ちゃんとは上手くやってる?」
え?
なんでそんなこと聞くの?
なんか胸がざわつく。
「はい、毎日楽しいです」
「そう、良かった。翔ちゃん、本当は、すごくいつも孤独で、なのに強がってて。だから、心配しててね」
安心したかのような穂乃香さん。私に初めて見せる表情だった。
「…はい、あの、私も聞いて良いですか?」
ちょっとだけ、心臓が、パクパクし始めた。
「いいわよ」
ニンマリしながら穂乃香さんは答えた。
「翔太郎の幼い頃はどんな感じでしたか?」
「…んー弱いくせに、いつも正義感あふれてて、やんちゃだったなぁー私の方が年上なのに、私が誰かにからかわれていると、私を必死で、助けてくれたかな。泥まみれになってね。すんごいおぼっちゃまなくせにね。」
穂乃香さんは、紅茶を飲みながら、話を続けた。
「でね、高校は別だったんだけど、私に変な虫がつくといけないから、大学は同じとこ行くって、勉強嫌いだったくせにめちゃくちゃ頑張ってたよ。で、合格した時には、ご両親から、私はお礼言われたりしちゃってー」
「あ、あのどんな両親でしたか?」
私は即座にその言葉に反応して聞いてみた。
「ああ、翔ちゃんは、顔はお母さんそっくりで、頑固で、妙に真面目なとこは、お父さんそっくりだったかな。とにかく、一人っ子だから、めちゃめちゃ甘やかされ、可愛がられていたよ」
そうなんだ。
やっぱり、穂乃香さんは何でも知ってる。
もしかして、あのことは?
「穂乃香さん、あ、あの、両親の死についても知ってますか?翔太郎は、謎の死と言ってますが…」
ふぅーと言わんばかりのため息をつく穂乃香さん。再び紅茶をゆっくり飲んだ。
「翔ちゃん、大変だったんだ。毎日毎日死にそうなくらい働いて……謎の死か、翔ちゃん、まだ諦められないんだ……」
珍しく顔色を暗くする穂乃香さんに、私は驚いた。
「諦められない?どういう意味?」
私は、全身、クエスチョンマークになった。
それは、あのお母さんからの手紙…遺書?
つまり、自殺ってことなの?
「ごめん、これ以上は、私の口からは言えない。ただ、私は翔ちゃん、弟みたいに大事に思ってるから、美園ちゃんにも、翔ちゃんを大事にして欲しい。本当に幸せになって欲しいんだ。あんないい奴いないから」
私は心に深く穂乃香さんの言葉が突き刺さった。そして、頭から、決して離れることのないこの光景。
「わかりました。ありがとうございます」
私は、なんて穂乃香さんは素敵な女性なんだと実感し、また穂乃香さんに強く深く打ちのめされた。