甘く抱いて、そしてキスして…【完】
「や、やめてよ、なんか照れちゃう」
私は赤くなった顔を両手で覆い隠す。

「そこが、可愛いんです」
そう言いながら、私の手を払いのける立石先生。

「ねえ、添い寝していい?疲れた…」


「や、や……あ、ああどうぞ」
私はベッド端によった。

「よいしょっと」
ベッドから、逞しい立石先生の重みを感じた。

「寒くない?こっちおいで……」
少しハニカミながら、私に顔を近づける立石先生。

「え?」
私が不意に立石先生を見上げた、その瞬間、
何か温かいものが、私に密着した。
柔らかくて優しいもの。

それは、立石先生の厚い唇だった。

た、立石先生…
どうしよう?
私、立石先生に甘えてよいの?
頼っていいの?
好きになってしまったら、どうしたらよいの?



立石先生は、次第にエスカレートし、私の口の中に熱い吐息を優しくそっと吹きかけ、舌をくるりと見事なテクニックで絡ませてきた。

私の体も唇も燃え上がる炎のように、熱くなってきた。

立石先生は、激しく私の体全体を揺さぶりながら、首から、鎖骨辺りまで、熱いキスを舐めるようにしてきた。

今度は氷のようにとけそうになる私。

は?
ダ、ダメだー
や、やめてー

口を封じられ、声が出ない。

立石先生の両手を必死でなんとか払い除けた。

二人の息は荒々しい。
立石先生は、かなり、興奮している。

「や、やめて…ね、やめて…」

ゴホゴホ、ゴホゴホ

「大丈夫?す、すみません…」
立石先生が、急に小さく見えた。


私は、ベッドの下に置いてあったお茶を飲み、冷静さを装った。

「大丈夫、大丈夫だから。気にしないで、今のは忘れよう」

私はベッドから、立ち上がった。

「ありがとう、今日は帰るよ」
私は、感謝を込めて明るく笑いかけた。

すると、立石先生は、慌ててベッドから、飛び出した。

「わかりました。ただ、ひとつ教えて下さい。僕とのキス、嫌でしたか?」
私の両手をギュッと握りしめて聞いてきた。


「…い、嫌じゃない……」
私は素直に正直に答えた。


「良かった。送りますー」
立石先生は、机に置いてあった車のキーを持ち出した。

「あ、それと、忘れよう、なんて言わないで下さい」


「………………ぅん……」


それから、私達は無言のまま、小さな密室に乗り込んだ。


私は、これも夢なのかと思うほど、心と体全体に異変を感じていた。


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