甘く抱いて、そしてキスして…【完】
第6章 事業展開
第1節 リフレッシュ
「いらっしゃいませ」
受け付けのお姉さんが爽やかに背筋を伸ばして言う。
仕事が始まる前に、私は行きつけの美容院にやって来た。
「いらっしゃい、美園ちゃん」
私の担当者の、飯島美桜(いいじまみお)38歳が、踊るように舞い上がって、受け付けまで、出迎えてくれた。
「美園ちゃん、今日カットするんだって?久しぶりだねぇー」
黒い眼鏡に、ボブヘアー、オシャレなシャツブラウス、パンツ姿。お笑いが大好きな愉快な美容師さん。いつも豪快に笑いながら、カラーをしてくれる。
「はい、イメチェンです。よろしくお願いします」
私はぺこりと頭を下げた。
「はい、奥へどうぞー」
私はスタスタと、飯島さんの跡をついて行った。そして、椅子に深く腰掛けた。
「今日は、どのくらいカットします?だいぶ伸びたねー」
私の髪は腰の上辺りまで、伸びていた。
「うーん、ミディアムロングかなぁ…」
「そうね、これくらいかな?」
私の髪にくしを当てる。
「カラーは?」
「明るい黒で」
私は、迷いはなかった。
「あら、珍しいね。ほんとイメチェンだねぇー」
「はい、あとは、お任せします」
私は、まるで初めて美容院へ来たような感覚がして、ドキドキし始めていた。
「了解です。可愛く色っぽく女子力アップするね」
「はぁーーーい」