甘く抱いて、そしてキスして…【完】
時計が20時30分となった。
私の初授業はなんとか上手く切り抜けた。生徒もハニカミながらもきちんと質問もでき、私の説明を理解してくれたようだった。


樋口翔太郎という塾長は、隣りで中3の数学を指導していたようだ。

塾講師は他には見当たらない。こんなんで経営は大丈夫なんだろうか?


「終わった?」


「はい、無事になんとか…もう帰っていいですか?」


「あれ、クルミに会わないの?」


「あっ、そうだ、会ってみたいです」


「2階にいるから、見て来い」


「え?一緒に………」


「よし、来い」
彼はそう言うと、私の右腕をつかんで、階段の所へ導いた。


ドスドスドスー


彼は勢いよく階段を昇った。私の手をつかんだまま……



「クルミ、お待たせ」


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