甘く抱いて、そしてキスして…【完】



合否は、だいたいその場で決まる。
8名のうち、真田さんを含めた5名が正社員として採用された。

そして、立石先生は、新人2名と加木屋校へ異動となった。

本校には、真田さん、太田川校、武豊校、各1名ずつ配属された。





塾はいよいよ受験シーズンに突入した。
どの校舎も生徒数は増加していく。
利益もどんどん増していく。

講師も指名数が増えたら、ボーナスに加算されるため、全力で頑張る。

いい傾向と流れ。


私は本校で、塾長業務を仕事が正確で早い、真田先生に引き継いでいた。

私の目は確かだった。

真田先生はすぐに生徒にも保護者にも慕われ、人気者になった。
中には、既婚者と知り、ショックを受ける人もいた。




「お疲れ様です。どう仕事なれた?」
優しく語りかける私。

「はい、だいぶ、楽しいですし」
爽やかに答える真田先生。


「よかったわー」

「奥様は、なんか言ってる?」
ちょっと気になる所である。
塾は、夜遅い仕事。


「大丈夫です。実は看護師なんで、夜勤あるんです。だから、ちょうど良いんです」
無邪気な笑顔を見せる。


「そうだったの?えぇーどこの病院?」


「赤羽総合病院の内科です」


「赤羽?あの大きな公園がある辺りの?」
私はドキッとした。体中が痺れた。




穂乃香さん、もう会いに行ってもいいですよね?


入院生活が長くなりすぎて、翔太郎もさすがにくたばっていた。



そろそろ私の所に帰してくれませんか?


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