甘く抱いて、そしてキスして…【完】
仕事が終わると、私は、翔太郎に無性に会いたくなった。

なんだかんだで、ずっとゆっくり話せてはいない。
美容院後の私の髪型の変化さえ、いいね、可愛いと軽く流された。

黒髪にしたのに?
もっと反応してよー
もっとじっくり見つめてよー


私は、耐え切れず、翔太郎にLINEした。

『翔太郎、会いたいよ。寂しいよ。
今日は、帰って来てー』

すぐに{既読}がついた。

『わかった。帰るよ!』

やったあー
翔太郎が帰って来る。




バタン

ドスドスドス

いつもより、ものすごく大きな音。
部屋中に響き渡る。

「え?翔太郎?」
私は、入り口をじっと見つめた。

「美園、ただいま。帰って来てたんだよ。俺も美園に会いたくて」
荒々しい低い声で、優しく私を見つめる翔太郎。

「翔太郎…会いたかったよー」
私は、翔太郎の元へ駆け寄った。

「やっぱ色っぽくなったな、黒髪似合うな。失敗だったかな?魅力ありすぎて、誰かに取られちゃったら大変だしな。」
まじまじと愛おしそうに私を見つめた。


「うふふーそうだよ、取られちゃうよ。私のこと、ちゃんと見ててよ」

「もう大丈夫だょ。心配かけたな。穂乃香は、今週末には退院する。」
私も翔太郎も同時に安堵感で、包まれた。


「そっかー良かった。じゃあ、お見舞い行っても大丈夫だよね?ずっと顔見てないからさー」

「いいよ、退屈してるだろうし…」
翔太郎は、重い何かが吹っ切れたかのように、私に微笑みかけた。

翔太郎が私の所に戻って来てくれた、私はそんな満足感で満たされた。
長かった。

私、我慢してたよ。
辛かったよ。
たくさん嫉妬したよ。
でも、頑張ったんだよ。


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