とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。

「それは、きっと紗矢が今まで良い子だったからじゃない?」

 ポンポン頭を撫でると、タイミングよくオーブンのタイマーが鳴った。
 チキン以外も何か作っているようだ。この匂いはチーズ。グラタンかピザか。気になるのに心臓がばくばくして動けない。

 あまりに幸せすぎて、今、夜空にサンタがソリで飛んでいても驚くことはないと思う。

 この幸せを伝えたいがために、料理中の喬一さんに抱き着くと、危ないと怒られてしまったのだった。


 クリスマスは、喬一さんの美味しいクリスマスディナーを堪能し、一緒にケーキの飾りつけをして、幸せで明日死んでしまうんじゃないかと思うぐらい甘い時間を過ごした。



 その朝方、クリスマスで浮かれたのだろう飲酒運転の玉突き事故の怪我人が運ばれてきたので、喬一さんは起きたら居なくなっていた。

 でも仕事前になると、漂わせている空気が変わるのが好き。

 命を扱う仕事だけあって、緊急の呼び出しの時は行ってきますのキスもせず、仕事モードになるピリリとした背中は、尊敬してしまう。


 小春や周りの人は、喬一さんはクールで強面で融通が効かない近づきがたい雰囲気の人だというけど、兄の家庭教師をしてくれていた時から喬一さんは喬一さんだった。


 だから私と一緒の時の彼が、本当の彼なのだと思う。

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