とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。

「だから、あんたが行くかと思ったわ。ちょうどいいじゃん。旦那の職場の受付嬢なんて」
「えええ、私が?」

 無理。仕事中のギャップを喬一さんも見られたくないだろうし、あの緊張感を私が壊しかねない。

「そお? まあ求人も殺到するから人には困らないだろうけど。私も転職しようかな」
「……転職する前にその書類、ちゃんと全部終わらせといてね」

 手が空いたら少しは手伝えるけど、他の社員の仕事の進み具合も把握したいから、仕事ができる小春はついつい後回しにしてしまう。

「そうする。もしかしたら私も寿退職かもしれないし?」

 それは小春がここに就職して彼氏が変わるたびに言っている言葉なので、耳にタコ状態だ。

「それに会社のことを心配してる場合じゃないかもよ。あんたも周りの整理しとかなきゃ」
「私も?」
「だって結婚したんだから、当然妊娠したら産休でしょ。それまで新卒を全員鍛え上げてね」
「ひい」

 全く意識していなかったわけじゃないけど、その言葉はプレッシャーになって私の背中にのしかかった。
 その場合、色々な手続きのことを想うと嬉しいだけではない、かも?

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