とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。



「……11、いや12回」
 ぽとり。
 落ちてくるような彼女の言葉に目が覚めた。

 ソファの上で、本を枕に眠っていたようだ。かけられたタオルケットがピンク色なのが紗矢らしい。

 テーブルの上に置いておいた腕時計を見ると、昼の12時を過ぎていた。
 朝、ご飯を食べて子どもの名前付け本を見ながら眠っていたらしい。

 数時間だったが、怒涛のように紗矢との出会いが頭の中で流れて、そして整理されたように思う。

 料理を始めた理由も、毎日ささやかでも幸せでありたいと思うのも、懇々と結婚を狙っていたのも、裏表のない彼女と違い腹黒い自分の考えが溢れてきて、少し不快だ。

「昨日は18回!? ひえ」

 何のことだとソファから少し顔を出して紗矢を見る。
 どうやら昼ご飯を作ってくれているらしい。卵を割る音と、ぐつぐつと鍋が煮える音がしている。

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